【視察報告】住民の「足」をどう確保するか

本ブログの要約
〇北海道医療大学が撤退することにより、町のバス事業が継続できない可能性がある
千葉県我孫子市での、送迎バスに高齢者等を混乗させる事業を視察
〇当別において、新たな交通体系をどのように再編できるか、より一層の調査をしていく
〇ドライバー不足についてもその対策が必要運転手も現在募集中

議会終了後の6月26日、27日の2日間、道外へ行政視察に個人で行いました。

今回は千葉県我孫子市、静岡県下田市の2か所を視察しました。 まずは我孫子市の報告をいたします。

当別町では現在、コミュニティバス事業「ふれば」を運行しています。

当別ふれあいバス – 当別町公式ホームページ – 札幌至近の自然あふれるまち

本事業は、町からの補助金のほか、北海道医療大学からの補助金1,400万円を受けて事業を展開しています。2028年度に北海道医療大学が北広島市へ移転することから、バスの運行に大きな支障が出ることが予想されます。

地域の「足」を守るために、何ができるか。他自治体の事業を視察し、影響を最小限にするヒントを研究してきました。

我孫子市では、民間の送迎バスに高齢者や障害者が同乗できる事業を展開しており、その利用状況や利点、課題についてヒアリングを行いました。

送迎バスの空席を活用した高齢者等の外出を応援:我孫子市公式ウェブサイト

送迎バスの空席を利用した高齢者外出応援事業

事業の概要を以下にまとめます。

出典:ヒアリング内容をもとに角田により作成

以下、質疑応答で得られた情報を要約します。(事業等の説明はリンクを貼っています。文字をクリックかタップしてください)

・本事業は、各事業者の無料送迎バスに混乗することを基本としている。そのため運行時間の調整等を部局が行うことはないため、事務的負担はかからない。また無料送迎であるため、運賃収受がない代わりに、費用負担はパスカードの作成費用(隔年支出)とい、損害保険料のみで、令和6年決算額は128万2千円。
・路線バス(青ナンバー事業者)から苦情(客を取られた等)は全くなかった。運送事業の委託先(医療機関が委託をかけている等)もあるほか、路線競合も少ないことも要因。
・交通体系整理のなかで、デマンドバスやライドシェアについても検討したが、デマンド型交通はコストが高く、運用は現実的ではないという結論。ライドシェアについては、運賃交通圏ごとの事業許可申請になり、松戸が申請をしているが、我孫子市内での利用実績はない。
・10事業者から3事業者の撤退については、市の直営事業(高齢者福祉センター)の送迎については、2センターあったものが統合されたため減。医療機関の一つは、運転手不足で送迎事業自体を取りやめたため減。特筆すべきは中央学院大学で、運輸支局から、法令違反の可能性があると市直接申し入れがあったため。中央学院大学では、担当事業者が特定旅客自動車運送事業の許可を受けて運行しているため、大学生と教職員以外の利用は法令違反に当たる可能性があるため、事業撤退を申し入れたとのことで減となった。
・今月行われた協議会で、住民委員からは「もっと拡充を」との声があった一方で、事業者側からは運転手不足を理由にこれ以上の便数増は困難と判断。結論は平行線だった。

本事業を含めた我孫子市交通体系(視察資料より抜粋)
送迎バスカード(我孫子市視察資料より抜粋)

得られた成果と考察

・この事業の主体は各事業者(病院、自動車学校)の送迎者に、登録者(パスカード所持者)を混乗することで、高齢者等の移動手段確保と、送迎自動車の空運送を回避するという目的を持っています。送迎ルートや本数の設定、ドライバー確保、車両のメンテナンス等を事業者に一任できるという点では、自治体の事務手続き等は過重となりません。その代わり登録事務や苦情対応を担っている。初めに利用制限(満車では利用不可)を明確に説明することで、苦情等も少ない状態が続いているとのこと。
高齢者デイサービス等の送迎については、事業者も行っていません。デイサービスは戸口から戸口の移送であることから、本事業においては利用方法についてはマッチングしづらい面があると考えられます。
・利用者にとっては何度利用しても、どの方面に利用しても無料であるので、そのメリットは大きいです。特に使用使途を問われないため、例えば自宅から通院するために利用し、その後に買い物のために別の事業者の車両を利用し、その後別の事業者の車両で帰宅するなど、外出の幅が広がるという意味で、「足の確保」に一定の効果があるものと考えられます。
・しかしながら、2024年問題や急速に進行しているドライバー不足(2種免許ドライバーに限らず)が、各事業者の運行体系の見直し、減便、最悪は撤退といった事例もあり、今後の在り方についてはニーズとのマッチングを勘案しながら、継続可能な事業展開を行う必要があるようです。

以上を鑑み、当別町で展開可能性については、以下の点で検討が必要であると考えました。
① そもそも送迎を行っている事業者の把握と拡充が必須。自動車学校は1事業者(篠路自動車学校)が対象となっている  が、対応可能かどうかを確認する必要がある
② ①を鑑みると、従前より行われているスクールバスの車両運用以外の送迎等について、議論する余地があるか
③ 既存の運送事業者の実態を把握し、新たな交通体系の再編について、それぞれのメリット、デメリットを整理しながら議論を進める必要がある

まとめ

視察の結果、当別町内の移送体系と合致できる部分と、難しい部分が明確となりました。それを踏まえ、当別にあった交通体系を示すためには、現行で運送事業を行っている青ナンバー事業者や、その他車両を所有し送迎を行っている病院等の事業者、さらにはデマンド交通やライドシェア等、多角的な視点から実現可能性について調査研究する必要があると感じました。

現行の事業者に対し意向調査を行うなどして、現在の課題を改めて整理し、その課題解決をも視野に入れた交通体系の再編が必要であると考えます。また、北海道医療大学の跡地にどのような事業が展開されるかも、再編議論において重要な課題であることも強く感じました。場合によってはこれまでの事業が継続される可能性もありますね。

2024年問題、燃料高騰、なり手不足等課題が山積するなか、住民の高齢化に伴う免許返納で、生活の足が無くなることによる外出機会の消失を食い止めることこそ、地域で暮らしていくための第一歩であると強く感じた視察でした。

さいごに

当別町では、現在コミュニティバスの運転手を募集しています。大型2種免許がなくても、企業が全額負担します。詳しくは以下リンクを参照ください。

当別ふれあいバスの運転手を募集しています – 当別町公式ホームページ – 札幌至近の自然あふれるまち

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